2014年11月5日水曜日

総合制作実習 自作魔鏡の製作 摩訶不思議編

日本の伝統技能を駆使した製品の「魔鏡」をご存知でしょうか?
テレビ番組などでも特集されたり、有名アニメの中にも「魔鏡」を題材としたものもあります。

字のごとく、魔の鏡と書いて「魔鏡」です。なんとも恐ろしい文言ですが、昔は摩訶不思議な鏡としてこのような名前がついたことでしょう。

魔鏡とは、鏡面から太陽光などの点光線を反射させ、この反射光の中に鏡面の裏面模様が映し出される摩訶不思議な鏡です。左の写真は、魔鏡の裏面です。右側が、反射光に浮かび上がった魔鏡現象です。




こちらは、以前に石川短大の学生が復元に成功した魔鏡です。
直径100〔mm〕の柄鏡風隠れキリシタン鏡であり、当時の学生たちの自信作です。




当校の学生は、この魔鏡の同等以上を目標として伝統技能の復元に挑戦しています。


ちょっと鏡について説明を・・・。

現在使用されているガラス製の鏡は、明治時代以降にガラスの輸入によって広く普及してきました。そもそも、ガラス鏡は、1549年にポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルによって伝えられたとされています。ガラスの鏡にも長い歴史があるのですね。

このガラス製の鏡以前は、銅合金製の鏡が使われていました。和鏡や柄鏡とも言われています。
江戸時代には、女性が身だしなみを整えるためにこの「柄鏡」を用いていました。時代劇でよく見る円状に柄がついている鏡です。この鏡は、骨董屋さんで発見しました(笑)。



この柄鏡は、めっきされておりますが長い年月使用していると鏡面がくすんできます。そこで、鏡研ぎ師が砥石で磨いた後、水銀やみょうばん、ざくろ酢などを塗って光沢を出していたとされています。「江戸名所図会(えどめいしょずえ)の内藤新宿」に当時の鏡研ぎ師の風景が載っています。興味のある方は、ネットで検索すると閲覧できますよ!

この銅合金製の鏡より以前は、水に映る自分の姿・・・ そうです。水鏡です。三国志の水鏡先生ではないですよ(笑)。鏡にも歴史がありますねぇ~。

今回学生が復元を試みている「魔鏡」は、ガラス製ではなく非鉄金属製の鏡です。
伝統技能の復元ということで文献調査から始まり、現在は魔鏡現象を確認するための実験を開始するところです。しかし、この魔鏡現象を得るためには、高度な手仕上げ技能が必要不可欠です。

本学生は、黙々と手仕上げの技能向上に努めました。現在は、一辺50〔mm〕の材料を平行度0.01〔mm〕以内の平面加工が出来る腕を持っております。この成果には、多大な努力を秘めています。

鉄工やすりで平面加工を行って魔鏡を製作しますが、この平面加工の優劣が魔鏡現象を左右します。



(ステップ1)やすりがけ初心者は、平面が中高になります。やすりを平行に動かして加工することが出来ずに外周を多く削ってしまいます。このような現象を「だれ」といいます。写真のオレンジ色は、光明丹といって高精度な平面が出ている面に塗り、削った材料をこの面にこすり付けることで平面度を測定しています。この平面測定を「あたりをとる」といいます。

(ステップ2)やすりがけに慣れてくると、平面が中低になります。これは、平面を加工しようとして材料の中心部分を多く削っている証拠です。この段階に達すると腕がかなり上達しています。

(ステップ3)センスが良いと数ヶ月でこの域に達します。平面加工が出来ている状態です。しかし、なかなかベタあたりの平面加工は難しい技能です。


当校で魔鏡製作を行っている学生は、現在までにこの手仕上げ技能の向上に努めています。現在の京都短大の学生において、手仕上げの腕は間違いなくNO.1です。体で覚えた技能は、一生の宝物ですよ!良くがんばっています。

さぁ、この腕を基に魔鏡現象の実験を開始しますよ。
マシニングセンタで試料を製作しましょう!プログラミングはOKですか?段取り八分で行きましょう!

次回は、実験結果をご報告します。ご期待ください。

今年度の総合制作実習のテーマは、こちらからご覧ください。

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